東京地方裁判所 昭和38年(レ)161号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕隣接する各土地部分の所有関係に争いがある場合には、境界確定の訴の当事者適格の有無は、まず双方の土地所有権の範囲を解決するため確定さるべき境界を定めた後に判断すべきである。
〔事実と争点〕北多摩郡東村山町大字久米川字上堀向一五一番の一八宅地五九坪(登記簿上)は控訴人がその登記名義人であり、同所一五一番の一九宅地五六坪(登記簿上)は被控訴人がその登記名義人である。右両土地は一つの直線を境界線として隣接していることに争いはないが、被控訴人の提起した境界確定の訴につき、控訴人は、両者間には土地所有権の範囲についても紛争があり、これが解決されなければいくら境界を確定しても紛争は解決せず、所有権の範囲と異る境界を定めることになる場合も生ずるから、このような場合に所有権の有無を離れて境界のみの確定を求める本訴は不適法であると主張した。判決は、この点につきまず確定すべき境界を定めた後でなければ判断できないとして、次のように判示している。
〔判決理由〕なるほど境界確定の判決は所有権の範囲までも確定するものではないから、所有権の紛争を直ちに全部解決することにはならないけれども、取引の実情からして境界が所有権の範囲決定上重要な資料となることは明らかであるから、これを確定しておく利益は大きいといわなければならない。ただ境界が不明確な場合にこれを確定する訴の当事者として適格を有する者は地番と地番の接する土地の各所有者であり、所有権を有しない者はその適格を欠くというべきである。したがつてこの適格の有無を考えるうえにおいては、当然確定さるべき境界において隣接する各土地部分につき、一方は被控訴人、他の一方は控訴人の所有に属するという関係があるか否かを検討しなければならない必要上、この点について争のある場合は双方の土地所有権の範囲を解決しなければならないことになる。しかしてこの結果、境界が一方の所有地内にあるようなことになれば、訴は不適法となるのである。しかし、この点は先ず確定すべき境界を定めた後でなければわからないので順次考えていくこととする。そこで、一五一番の一八と一五一番の一九の境界をいかに確定するのが相当であるかについて考える。――中略――以上の次第で、一五一番の一八と同番の一九の土地の境界は別紙第二図面ハヌの線とすべきところ、控訴人は右境界如何にかかわらず、公簿上表示されている面積を有するだけの土地を市川七次郎から買受け、その所有権を取得したと主張するのでこの点について考えるに、……によれば控訴人は昭和二六年三月一八日市川七次郎から一五一番の一七、同番の一八の土地を買受けたものであり、市川七次郎はその当時現地において分筆当時境界標識として打つていた木杭を控訴人のために買受交渉にあたつていた若栗不二夫に指示して売買土地の範囲を確認したこと、同人は同部分の土地面積が公簿上の面積どおり存すると信じていたことが認められるところ、前述の如く一五一番の一八と同番の一九の境界標識たる木杭は別紙第二図面ハヌの二点に存したものであり、右若栗は市川七次郎からこの木杭によつて売買土地の範囲を指示されたものと推認されるから、控訴人が買受けこれによつて所有権を取得した土地の北側境界は同図面ハヌ線であつたというべきであり、控訴人主張の如く公簿上に表示されているだけの面積を有する土地の売買であつたことを認めるに足る証拠はない。また……によれば、被控訴人は昭和二七年六月三日一五一番の一九の土地を市川七次郎から買受けたものであり、買受については同人から現地で本杭によつて表示されていた別紙第二図面ハヌ線が同土地の南側境界であると指示されて買受けたものであることが認められ、これを覆えすに足りる証拠はない。そうすると、控訴人と被控訴人は以上認定の別紙第二図面ハヌ線の境界により、隣接する各土地の所有権というべく、境界確定の訴の当事者としての適格を有し、また、両土地の境界について控訴人と被控訴人間に争のあることは明らかであるから、被控訴人の本訴提起は適法である。しからば、控訴人の訴却下の主張は理由がなく、本案たる境界確定の訴について判断すべきである。しかるところ、一五一番の一八と同番の一九の土地の境界については以上述べたところから明らかなとおり、これを別紙第二図面ハヌ線と確定するを相当と認める。(西山要 中川哲男 岸本昌己)